切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
だが社内はなんだかザワザワしている。
部長は慌てた様子でオフィスを出て行き、挨拶も出来なかった。
もう出社していた佐藤先輩に「おはようございます。何かあったんですか?」と尋ねると、彼女は声を潜めた。
「社長が入院したらしいの」
佐藤先輩の返答に相槌を打つ。
「……それは大変ですね」
「それで、どうも社長が交代するようなのよ。それで上はバタバタしてるわけ」
「……なるほど」
交代するということは、社長は重い病気なのかな?
でも、確か常務が社長の息子らしいし、後継者でもめることはなさそう。
自席に座ってパソコンを立ち上げたら、「松本さん、ちょっと来て」と背後から男性に声をかけられた。
どこかで聞き覚えのある声。
振り返れば、そこに常務がいて……。
え? どうして常務がここに?
驚きで目を丸くする私。
しかも、常務は私のことを『松本さん』と呼んだ。
< 240 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop