切愛願望～極上御曹司の庇護欲からは逃げられない～

私が考えていることが顔に出ていたのか、渡辺君は玲司さんのことを話し出した。
「松本が居酒屋で酔っ払った時、お前の彼氏が迎えに来たんだ。そこへ偶然常務が通りがかって、親しげに話していたし、どこかで見覚えのある顔だと思って、過去の社内報を調べて見たら、お前の彼氏が専務として載ってたわけ」
「……そうなんだ。私……知らなかった」
独り言のように呟く私。
でも、玲司さんは私に伝えようとしたのかも。
だって、昨日ノワールで彼はなにか私に言いかけていたような気がする。
「やっぱお前、専務だって知らなかったんだな？　騙されてたんだよ。悪いことは言わない。捨てられる前に別れろ」
頭ごなしに言われて腹が立った。
玲司さんは私を騙すような悪い人ではない。
きっと私のことを思って支援のことも、真田物産の役員だと言うことも黙っていたのだろう。
知っていたら彼の援助を素直に受けなかったし、就職だって別のところにしたと思う。