切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
15、大切なもの
「玲司さん、ギュッとして欲しい」
玄関までいつものように美月を見送ろうとしたら、彼女が上目遣いに俺を見る。
「美月がそんなこと言うの珍しいな」
甘く微笑んで、彼女をこの腕に抱きしめる。
なにか不安でもあるのだろうか?
仕事のことか、それとも……矢島かお母さんのことか。
同居した当初よりはだいぶ打ち解けたが、肝心なことになると、美月は全部自分で抱え込もうとするところがまだある。
この様子……なにかあったな?
だが、問い詰めても彼女は誤魔化すだろう。
優しく美月を抱きしめていたら、彼女は俺の胸に手を当てて、俺を見てニコッと笑った。
「行ってきます」
その笑顔はどこか無理しているように思えた。
彼女に顔を近づけて元気づけるように口づける。
"俺がいるから大丈夫"と美月に言い聞かせるようにーー。
「行ってらっしゃい」
キスを終わらせて離れると、彼女は少し寂しそうな表情になる。
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