切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
いつも飄々としている晴人だが、その声は酷く焦っていた。
美月が攫われてかなり精神的ダメージを受けているんだな。
「……多分、矢島だろうな」
苦く呟けば、晴人は追跡している車の行き先を伝える。
「ワンボックスは六本木方面に向かっている」
「六本木……ね」
そう呟いて考える。
矢島の会社もマンションも銀座にある。
だが、あいつは風俗店もいくつか持っていて、そのひとつが六本木にあった。
「自分の店に向かってるのかもしれない」
ポツリと呟けば、晴人は落ち着かない様子で言った。
「やばい。見失いそう。行き先がわかったらまた連絡する」
「ひとりで突入とかするなよ、晴人。俺が駆けつけるまで待て。和也さんにも連絡しておく」
『和也さん』というのは、涼華さんの旦那で、警視庁のエリート。
「了解」
短く返事をして晴人が電話を切ると、すぐに和也さんに事情を説明して応援を頼んだ。
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