切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
スマホをギュッと握りしめ、空を見据える。
美月は無事でいるだろうか。
「兄さん、この後の会食、俺が対応する」
不意に斗真に声をかけられハッとした。
和也さんとの通話を横で聞いて状況を理解したのだろう。
「ああ。頼む」
俺がそう答えると、斗真は真っ直ぐに俺を見て言った。
「松本さ……いや、美月さんの無事を祈ってる」
「ああ」
弟の目を見てそう返すと、また晴人から電話がかかってきた。
呼び出し音が鳴る前にスマホの通話ボタンに触れれば、俺が話をする前に彼が口早に言った。
『美月ちゃん、矢島に連れられて六本木五丁目の『パープルアイズ』って風俗店に入って行った。だが、気を失ってるのか、若い男に担がれてて。美月ちゃんのお母さんも一緒だ』
美月の母親も一緒……。
ひょっとしたら母親に誘い出されたのかもしれない。
「わかった。晴人は見つからないよう見張ってろ」
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