切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「汚くなんかない。美月は綺麗だよ」
彼女は抱き寄せ、そのまましばらく抱いていた。
五分くらい経って、だいぶ落ち着いて来たのか、彼女は俺から離れようとする。
「もう……大丈夫」
その声は他人行儀で、距離を置かれているような気がした。
「私……ここを出て行く。玲司さんにこれ以上迷惑かけたくない」
俯いて無機質な声で呟く彼女。
「迷惑なんてかけられていないし、絶対に行かせない」
ここで美月を手放せば、もう彼女には会えないと思った。
「だって……真田物産の社長になるんでしょう?」
切ない声で俺に確認する美月に、あえて挑発的に返す。
「美月は俺が社長になるって理由だけで俺を嫌いになるんだ?」
否定するのはわかっていたから、もっと冷静に考えさせようと思った。
「違う! 玲司さんの邪魔になるもの。それに社長令息の玲司さんと私とじゃ釣り合わない」
声を荒らげて反論する彼女に自分の出生について伝える。
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