切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「もう大丈夫だよ」
しゃがんで彼女をそっと抱き締め、その背中をトントン優しく叩く。
実際に矢島を見たのは初めてだが、あんなに図体がデカイとは思わなかった。
身長は俺よりは低いが百八十センチくらいありそうだし、柔道でもやっていたようなガタイをしている。
あんな男に襲われそうになったことがあるのだから、彼女が怖がるのは当然だ。
五分くらいそうしていると、彼女の震えも止まった。
「帰ろうか?」
美月ちゃんに声をかけると、彼女はコクッと頷いた。
まだ、ショックから立ち直っていないのか、表情は強張っていて、しゃべらない。
彼女はこの四月から会社の独身寮でひとり暮らしをしている。
だが、このまま寮には帰せないと思った。
美月ちゃんの様子が心配なのもあるが、矢島が彼女に付き纏ったら?
彼は美月ちゃんの手を掴んでいた。
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