切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
その質問で当初の目的を思い出し、ポケットから彼女のスマホを取り出して手渡す。
「いや、美月ちゃんスマホ忘れていったから届けにね」
「あっ、気づかなかった。ボケボケですね、私」
はにかんだ顔で小さく笑う彼女。ようやく笑顔が見られてホッとした。
タクシーが美月ちゃんの寮に着くと、運転手に待っているように言って、彼女と一緒に降りる。
「玲司さん、いいですよ。もう着いたので。あの送って頂いてありがとうございました」
ペコッと頭を下げる彼女の手を掴かむ。
「送ったんじゃなくて、ここには美月ちゃんの荷物を取りに来ただけだから」
「へ?」
ポカンとした顔をする彼女の手を引いて五階建ての寮のエントランスに入ると、奥にあるエレベーターのボタンを押した。
「確か三階の角部屋って言ってたよね。三〇一号室。今度から男に部屋番号とかペラペラ喋っちゃだめだよ」
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