切愛願望～極上御曹司の庇護欲からは逃げられない～

まあたいていノワールに連れて行かれ、そこでコーヒーの淹れ方やカレーの作り方を習った。
高校から大学までは祖父に頼んで寄宿学校に通わせてもらい、大学の時に株で儲けて今住んでいるマンションを買った。
ノワールは祖父が俺に残してくれた遺産。
今までずっとひとり暮らしだったからな。
人のいる生活に慣れるだろうか？
だが、そんなこと言ってられないか。
矢島の目が忘れられない。
獲物を狙う蛇のような目だった。
美月ちゃんをひとりにさせるのは危険だ。
スマホをじっと見つめ考え込んでいたら、彼女がスーツケースを持って出て来た。
「玲司さん、準備できました……って、あれ、どうかしました？」
「いや、なんでもない。じゃあ、タクシーに戻ろう」
彼女の手から有無を言わさずスーツケースを奪い、タクシーに乗る。
「銀座まで」
運転手にそう告げれば、美月ちゃんは驚いた顔をする。