切愛願望～極上御曹司の庇護欲からは逃げられない～

絶望が私を襲う。
「嫌〜！」
声を限りに叫んだら、玲司さんの声が聞こえた。
「大丈夫だよ、美月ちゃん」
彼の声を聞いて、ハッと目が覚める。
気づけば、薄明かりの中、玲司さんに抱き締められていて……。
「……夢？」
肩で大きく息をしながら玲司さんに目を向けた。
額には汗が滲む。
「矢島の夢でも見た？」
彼が私の目を見て尋ねると、コクッと頷いた。
「……手足を縛られて……矢島に襲われそうになって……」
夢のことを伝えるが、ブルッと寒気がした。
「怖かったね。でも、ここには矢島はいないからね。安心して」
玲司さんが優しく微笑んで、私の髪をそっと撫でる。
「何か飲む？」
そう彼に聞かれたが、「……ううん、いい」と子供のように答えた。
夢で良かった。
自分では大丈夫なつもりでいた。
でも……やっぱりどこかで矢島にまた会うんじゃないかって恐れているのだろうか。