切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
大丈夫。夢だもの。玲司さんが言うように矢島はいない。
自分に必死に言い聞かせるが、不意に彼の服に目がいく。
パジャマ……。
きっと寝てたんだろうな。
「……ごめんなさい。もう夜中ですよね? 起こしちゃってすみません。私……大丈夫ですから」
玲司さんの胸に手を当てて離れようとするが、彼はそんな私をギュッと抱き寄せて耳元で囁いた。
「身体が震えてる。無理しちゃ駄目だよ」
甘い声で言われ、ううっと嗚咽が込み上げてきた。
泣いちゃいけないって思うのに、止められない。
ずっとひとりで我慢しなきゃって思ってた。
しっかりしなきゃって……。
だって、母は父が死んでからすっかり変わってしまったし……、私には頼れる身内なんていない。
孤独だったんだ。
でも……こうして私に胸を貸してくれる人がいる。
頼っても……甘えてもいいのかな?
玲司さんの胸はいつだって温かい。
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