切愛願望～極上御曹司の庇護欲からは逃げられない～

祖父さんには孫の中で一番可愛がってもらったし、行かないわけにはいかない。
水嶋もそれがわかっているから祖父さんのことを口にする。
無駄な足掻きとわかっていても毎回すんなり出社しないのは、能面顔の水嶋が怒る顔が見たいから。
それで、俺に愛想を尽かしてくれればいい。
水嶋は親子で真田家に仕えてくれていて、彼の父親は祖父さんの秘書をしていた。今は社長である親父の秘書をしていて、息子の彼が俺の秘書をしている。弟の斗真の秘書をやればいいのに、なぜか水嶋は俺の側にいて、俺が次期社長になるのを望んでいる。
俺は社長になる気なんてないのにな。
だが、今日は彼に何も言われずとも出社する気になったのは美月ちゃんのことがあるからだ。
「うちの子の様子を見ておきたくてな」
俺が水嶋にそう返せば、彼は怪訝な顔をする。
「『うちの子』？」