切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
社長は俺には目も向けず、書類を見つめたまま冷淡に返す。
だが、俺は構わず意見した。
「現地の反対運動も過熱していると聞く。計画の実現は難しいんじゃないかな。事業から撤退すべきだ」
俺の発言に社長は表情を険しくする。
「この事業にいくら金を投じたと思ってるんだ?」
「ざっと一兆二千億ってところだろ?だが、中断しなければ、もっとひどい不良債権になる」
俺の忠告に社長はムッとした顔になった。
「不良債権にはしない」
「社長は状況がわかっていないようだな」
社長に冷ややかに告げれば、弟の斗真が割って入る。
「……専務、そのくらいに」
「私はいつだって先を見つめて決断している。たまに会議に出ているだけのお前に言われたくない!」
社長は声を荒らげてドンとテーブルを叩くと、会議室を出て行った。
役員達はざわめくが、俺は構わず声を大にして言う。
「自分の地位が惜しければ、あんた達も呑気に椅子に座ってるんじゃなくて社長を説得したほうがいい。でないと、五年以内にうちの会社は赤字に転落するぞ」
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