切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
母はきっと寮にだって現れたかもしれない。
流石に会社の中にまで入って来ることはないだろう。でも、帰る時待ち伏せされてたらどうする?
「松本、お昼食いに行くぞ」
不意に渡辺君に肩を叩かれ、ハッとした。
「……お昼?」
「お前、ぼーっとしてんなよ」
呆れ顔の彼に「ごめん」と条件反射で謝って、彼に言われた言葉を頭の中でリピートする。
「え……と、でも、渡辺君、いつも同期の子達と食べに行ってなかった?」
渡辺君の誘いに躊躇してしまう。
「特に約束してるわけじゃない」
彼の返答を聞いて、少しがっかりした。
「ああ。そうなんだ。……あの、佐藤先輩も一緒にどうですか?」
渡辺君とふたりだと会話が続きそうになくて、近くにいた先輩を強引に誘えば、彼女はにこやかに微笑んだ。
「いいよ。今日のA定食何かな〜?」
楽しげに言う佐藤先輩の問いに渡辺君がすかさず答える。
< 91 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop