切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
「いえ、ちょっと寝不足なんです」
「どうせ下らない海外ドラマでも見て夜更かししたんだろ?」
トンカツを口にしながら私の方に目を向ける渡辺君の言葉に「まあ、そんなとこ」と曖昧に返した。
「渡辺君は出身はどこ?」
佐藤先輩に聞かれ、渡辺君は箸を止める。
「俺は福岡です。大学で上京してきましたけど」
「渡辺君、T大でしょう。頭いいよね。松本さんは優章大だし、今年の総務の新人はすごいなあ」
佐藤先輩がどこか誇らしげに言うと、渡辺君が意外そうな顔で私を見た。
「え? 松本、優章大? あそこって偏差値も高いけど、金持ちの通う学校じゃなかったっけ?」
彼の質問に咄嗟に嘘をつく。
「私は奨学金もらって通ってたの」
チクンと胸が痛む。
NPOの支援を受けていたなんて話はしたくなかった。
「へえ、そうなんだ。お前、のんびりしてる割に頭はいいんだな。先輩はどこの大学なんですか?」
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