切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
義理で玲司さんと晴人さんにあげたことはある。
手作りは重いだろうから、市販のものだったけど、ふたりはとても喜んでくれた。
それで、普段は店で出さない紅茶と手作りケーキをご馳走してくれたんだよね。
「松本、何ひとりでニヤついてる? さては、バレンタインにチョコあげて告ったな?」
渡辺君がスーッと目を細めるが、残念ながら語るような告白経験は私にはない。
「義理チョコしか……あげたことないです」
申し訳なさそうに言ったら、渡辺君がつまらなそうな顔をする。
「なんだ。お前って彼氏いんの?」
その質問、最近玲司さんにも聞かれたなあ。
「いないですよ。きっと一生出来ないです」
自信を持って答えたら、渡辺君に笑われた。
「お前ねえ、なんかお兄さん心配になってきたわ。いい男紹介しようか?」
私の家庭を知って付き合ってくれる人なんて……多分いない。
「いや、渡辺君の知り合いってハイスペックな人が多いだろうし、私には分相応だから遠慮しておくよ。でも、気遣ってくれてありがと」
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