彼女になれない彼女
「はーい、沙和の分。」

そこへママが私のご飯を持ってきた。
平良と違って私のはすごく普通のご飯。
ご飯と豚汁と漬物と肉野菜炒めが定番。
串焼き屋だけど串焼きはなし。

「いただきまーす。」

私が食べ始める頃、平良は定食を食べ終えて下膳したところだった。

「じゃあ俺帰るわ。」
「ほんとに帰っちゃうんだね。」
「うん、じゃ。ご馳走様でした!」

平良は「ご馳走様でした」だけ厨房にいるパパとママに聞こえるように大きく言って、さっさと店を出ていった。

なんか今晩はすれ違いだな。

テーブルに残されて少し虚しさが残った。

あ。
ちょっと確認したいことがあった。

私は立ち上がって店を出る。

外は真っ暗だ。
とは言っても、ここは横丁。
平日の夜、客足は少なくない。
自分の家の裏口から入ろうとしている平良の姿を見つける。

「平良!」

平良が少し驚いたような顔で私の方を見る。
平良の前まで駆け寄る。

「なに。」

少しぶっきらぼうな平良の声。

「昨日の告白・・・。」
「ああ、今日ちゃんと断ったよ。」
「うん、矢野さんだったんだね。」

私の言葉に少し言葉を失ったような顔をする。

「早いな、情報回るの。」
「なんでかなって思って。」
「何が?」
「なんで、矢野さん断るために私と付き合ったの?いいの?それで。」

お昼からモヤモヤしていた私は単刀直入に聞いた。
あんな可愛い子を振って、なんで私なんだろう。
後悔してないだろうか。

平良はしばらく黙り込んだ。
うちの店からワイワイと賑やかな声が漏れてくる。

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