彼女になれない彼女
電車に乗ると、車両の中にはやっぱり同じ制服の姿があった。
「あっ」というような驚きの反応を感じる。

平良はまっすぐ座席に向かった。
私の分のひと席を空けて座る。
私がそこに座る。
さりげなく当たる左側。

平良は本当にいつも通り普通だ。

昨日、キスしたよね?

「今日朝練がないだけで、ずっとまた部活だー。」

平良が独り言のように言う。

そっか、私もやること探さないとな。

なんとなくどこを見ればいいのか分からなくて、視線を向かいの窓向こうにやった。

駅を出て、学校へ向かう間も何人とも会った。

野球部の人たちは、みんな冷やかし気味に追い抜いていく。

平良は全部に笑いながら反応する。

私、本当に付き合ってるんだ。

10分くらいの道、平良は話してるけど私はいつも通り話せてないような気がする。

今日はすごくすごく緊張している。

平良がいつもよりずっとかっこよく見える。

こうやって毎日一緒に学校行けるなら、朝練の時間でも家出るよ?

口には出せない。

平良とは下駄箱の先で分かれた。

最初から最後までいつも通りだった。

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