彼女になれない彼女
田尻くんと高野くん
講義室に入ると、ど真ん中に真っ先に目に入る集団があった。

矢野さんと他校の男子生徒2人だ。

誰も近寄れない空間を作ってしまっていて、3人だけで和気藹々と話している。

さすが矢野さん。
声かけられちゃったんだ。

入り口でどうしようかと少し悩んでいた間に、矢野さんに見つかった。

「前山さん!」

こっちに手を振ってくる。
矢野さんの声に、隣にいた男子2人も私の方を見る。

顔面レベルは、高い。

この輪に入るくらいなら、私一人で受けるんだけど。

そう思いながらも、渋々輪に近づく。

「おはよ。」
「おはよう!」

私が言うと、誰だか分からない男子2人まで答えた。

誰。

「今日ね、後ろの席に座ってたから、つい話しかけちゃったの。東高の田尻くんと高野くん。」
「田尻です。」
「高野です。」

2人の爽やかな笑顔に少し圧倒される。
東高って県内トップの進学校じゃん。
こんな爽やかな生徒もいるなんて。

「前山です。」

私は自分でもビクビクしてるのが分かる。
私ってこんなに人見知りだったんだ。

「東高だから分からないとこ教えてもらえそうじゃない?」

矢野さんが私に言ってくる。

分からないところは講師に聞くよ。
私はこういう眩しい男子とは今まで縁がなかった。

「そうだね。」

愛想笑いで話を合わせる。

「でも俺ら東高でもバカな方だけどね。」

高野くんが言う。

「入学した時が一番頭良かったってやつ。」

田尻くんが続ける。

「とか言って絶対頭いいじゃーん。」

さすが矢野さんはノリがいい。
私が相変わらず愛想笑いで流してる間もちゃんと反応する。
こういうところだよなあ。

高野くんと田尻くんは「いやいや」と手を振りながらも嬉しそうにデレデレする。

< 41 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop