彼女になれない彼女
講義が終わる。

駅までも自然と4人で向かった。

「2人は何で帰んの?」

高野くんが聞いてくる。

「私駅からバス。」
「私は電車。」

矢野さんと私が答えると、田尻くんが目を開いて私を見てきた。

「電車、どっち方面?」
「下り。」
「おーー!一緒!よし、一緒に帰るぞ。」

高野くんが「大丈夫?嫌だったら先帰っちゃっていいんだからね?」と私に気を遣ってくれる。
矢野さんも「平良くんに見つからない?大丈夫?」と心配する。

万が一見つかっても、心配されるような関係でもない自信があった。
しかも、そんなに平良は私のことを気にしてるとは思えない。

「大丈夫、大丈夫。」

私の反応を見ると、田尻くんは顔をくっしゃくしゃにして「イェーイ」とダブルピースする。

思わずカワイイと思ってしまった。

電車の時間が近づいてきたから、高野くんと矢野さんと別れて急ぎ気味に改札に向かう。

改札前であれ?と立ち止まる。
改札を抜けた田尻くんが振り向く。

「どした?」

いつも入れてるカバンの内ポケットに定期がなかった。
焦って他のポケットも探す。
田尻くんがわざわざ改札を通ってこっちへ戻ってきた。

「ごめん、電車来ちゃうから先行っていいよ。」
「いいよ、まだ時間あるから落ち着いて探そ。」

どこ。どこ。
収納が多いカバン。
そのせいでポケットに手を突っ込んでもなかなか定期に当たらない。

ホームで電車が入るアナウンスがした。

「いいよ、ゆっくり。次の電車もあるし。」

田尻くんが優しく言う。

見つけたのは、電車から降りてきたばかりの人が流れてきた時だった。
いつもは絶対に入れない外ポケットに入っていた。
ダメ元で改札を抜ける。

急ぎ足で階段を下りてるところで、ドアが閉まる音がした。

田尻くんが私を見る。

「ダメだったな。」

ハハッと笑う。

「ごめん。」

私は両手を合わせる。

「全然大丈夫。むしろラッキー。」

ラッ“キー”という言葉のせいか、ニッと笑ったイタズラな顔になる。

時刻表を見る。
次の電車まで20分だ。

「ちょっとお茶できるじゃん。」

田尻くんがいう。

私も流れでつい「そうだね。」と言ってしまった。

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