彼女になれない彼女
昼休み。
野球部の男子がニヤニヤしながら私のところまできた。

「今、彼氏、女振ってるよ。」

彩乃が「え!」と騒ぐ。

「だれだれだれ。」
「4組の矢野さん。」
「矢野美織!」
「昨日告白されてたらしいよ。」
「えー!矢野美織、平良のこと好きだったんだ。」
「まあ、似合ってるけどね。」

矢野さん。
矢野美織さん。
たくさんの男性を振ってきたことで有名なほどモテることは知ってる。
話したことはないけど、1年の頃から有名だった。

まさか矢野さんだったとは。
矢野さんを断るためだけに私・・・?

「前山さん、今すごく優越感に浸ってんだろ。」
「浸ってないよ。」
「平良もモテるなー。」

男子たちはそう言って自分たちの机に戻っていったものの、廊下はザワザワしているのが伝わってきた。

あっという間に、私と平良が付き合ってることだけが学校中に広まってしまった。
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