期間限定『ウソ恋ごっこ』
「とんでもない。めっちゃ美味しいし、ちゃんと食べてます。先輩の食べっぷりに見惚れていただけです」


「下品な食べ方で悪かったな」


ムスッとした顔が子どもっぽい。ご飯の入ってるほっぺたが膨らんでるから、余計にかわいく感じる。


普段はすごく大人っぽい先輩もこんな表情するんだなぁ。今日は大発見ばかりで、なんだかウキウキしてくる。


すると先輩は、ナスの天ぷらをお箸でヒョイと摘まみ上げながらニヤリと笑った。


「お前の大好きな司だってな、俺と似たようなもんだぞ」


「えー？　伊勢谷先輩はお上品な白鳥ですよ。フルコース料理を完璧なマナーでいただくイメージしかないです」


そう主張すると、先輩はイタズラっぽい顔でフフンと笑った。


「あいつ、もんじゃ焼き食ったことないって言うから店に連れてったら、目の色変えてもんじゃに食いついてたんだぞ？　『こんな美味いもの初めて食ったあ！』って、店中に轟く声で絶叫してたんだからな？」


「うそー！　やだ、想像できなーい！」


「事実だよ。証拠の動画撮っておけばよかったな」


あたしたちは声を上げて笑った。


先輩の手料理は文句なく美味しいし、会話は楽しいしで、どんどん食が進む。


あっという間にあたしも先輩も完食。ごちそうさまの挨拶をして、あたしは後片付けを申し出た。
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