期間限定『ウソ恋ごっこ』
「そうか? じゃあ、ひとつ提案だ。来月までのレッスン期間中、毎日俺と一緒に夕飯を食ってくれよ。レッスン料代わりに」


「え?」


「いいだろ? それくらいしてくれても。な?」


軽く甘えの交じった声で懇願(こんがん)されて、トクンと胸が騒いだ。


気を落ち着かせようと何度も目をパチパチさせていたら、先輩はスッと身をかがめて顔を寄せてきた。


ふわっと香る素敵な匂いと、真正面の綺麗な顔に一瞬息が止まる。


「な? いいだろ?」


部屋のライトに照らされた黒い瞳が、昼間のときとは違う魅力をもって輝いている。


伊勢谷先輩の明るいブラウンの瞳とは違う、神秘的な深い瞳の色に胸の奥を掴み取られたような気がして、呼吸が上がった。


自分の顔が、ほんのり赤く染まっているのがわかる。


こ、こら、あたし! なにこんなトクントクンしてるの!?
< 161 / 408 >

この作品をシェア

pagetop