期間限定『ウソ恋ごっこ』

自宅に着く頃にはもう、叫び続けたあたしはヘトヘト。かすれた声で先輩にお礼を言った。


「お、送ってくれて、ありがとうございました」


「おう。じゃあな」


そう言って先輩は、またあたしにデコピンする。キュッと両目を閉じてから薄目を開けると、目の前に優しい笑顔があった。


「おやすみ。また明日な」


その笑顔と、何気ない挨拶に心が弾んだ。


『おやすみ。また明日』って挨拶を自然に交わせるようになれたことが、すごくうれしく感じるんだ。


だってほら、先輩みたいな親切な人と親しくなれたのは、普通にありがたいことだもんね？


単純に、そういうことだよね？


ほかに意味なんてない、よね……？


あたしに向って軽く手を振り、遠ざかって行く近藤先輩の後ろ姿を見送りながら、あたしはずっとそんな自問自答を心の中で繰り返していた。