期間限定『ウソ恋ごっこ』
学園中の女の子たちから理想のアイドルとしての振る舞いを強制されるのは、そりゃ本人からしたら鬱陶(うっとう)しくもあるだろう。


近藤先輩が大きな負担に感じるのも無理ない。


そう思ったら、なんだか切なくなってしまった。


「近藤先輩も伊勢谷先輩と同じように、みんなからの勝手な称賛に悩んでいたんですね……」


「いや、悩んでない。とにかくひたすら不愉快で、鬱陶しい」


「は、はあ」


ズバッと言い切る先輩の表情を見ると、たしかに迷惑そうには見えても、悩んでるふうではない。


近藤先輩のこういう強さは、伊勢谷先輩のナイーブさと真逆なところだ。


「だから、俺はまだいいんだ。でも司は人間関係にトラウマがあるから、上っ面だけを見て近づいてくる相手でも拒否できない。そんな司の繊細さも知らずに『天性のアイドル』なんて騒いでるやつらを見ると、腹が立つんだ」


実際に伊勢谷先輩の上辺しか見ていなかった身として、近藤先輩の言葉が胸に痛い。


悪気はなくても、悪気がないからこその言動が人を傷つけたり、追い詰めたりすることってあるんだよね。
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