期間限定『ウソ恋ごっこ』
「……好きじゃないなんて言えねえよ」


喉の奥から絞るような声で先輩が答えた。


「お前に嘘はつきたくない」


あたしの胸に喜びの光がサッと射した。


それはつまり、あたしを好きってことですか!?


そう聞き返そうとしたあたしの唇が、石を含んだみたいに動かなくなった。


目の前の先輩の顔が、これまで見たこともないほど苦しそうだったからだ。


ほんの一瞬だけ胸に射した希望が、花が萎れるみたいにみるみる小さくなっていく。


代わりに悲しみがじわじわと体の奥から湧き上がって、両目からあふれ出そうになった。


どうしてそんな顔をするの?


そんなに、あたしを好きだと言いたくないの?


あたしを好きだと認めることは、そんなに苦しいことなんですか?


「俺はもう、なにも言えない。俺は司を裏切りたくないんだ」


先輩が言った『裏切り』という言葉の重さに、ハッと胸を突かれて我に返った。
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