期間限定『ウソ恋ごっこ』
忘れることができるなら
正直に言うと、五時間目の授業はサボッた。


あんなことがあった後で、普通の顔して教室にいられる自信がなかったから。


泣いたせいですっかり腫れぼったくなった目を、クラスのみんなに見られたくなかったし。


「フラッシュバックして授業中に泣き出しちゃうかも、って心配だったし」


「いいんじゃない? 授業を受ける権利があるなら、サボる権利だって同等にあるよ」


「真央ちゃん、いいこと言うねぇ」


学園からの帰り道の途中、真央ちゃんと一緒に大きな交差点で信号待ちをしながら、そんなヘリクツを言って軽く笑ったりして。


目の前の道路を忙しく行き交う車の列や、淡々と流れる人波を眺めつつ、我ながら現実逃避してるなぁって思った。
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