期間限定『ウソ恋ごっこ』
「今日もお前のために包丁を使わないレシピにしたからな」


「はい。ありがとうございます」


「でもそろそろ包丁使わせるつもりだから覚悟しとけよ」


「げ!?」


大げさに驚いたら先輩が楽しそうに笑って、テーブルの上の食材に手を伸ばす。


あたしもウキウキと食材をシンクへ運びながら、ふと壁に貼られたカレンダーに目が留まった。


赤い丸で囲まれた日にちに『レッスン最終日』と書かれているのを見て、一瞬体がスーッと寒くなる。


現実を突き付けられた気がして顔から笑顔が消え、足が止まった。


「美空、オリーブオイル用意してくれ。あと岩塩も」


「あ、はい。先輩」


「んー? なんだって? 先輩って呼んだか?」


野菜を洗っていた先輩が耳に手を当てながらこっちを見て、あたしは慌てて言い直した。


「えーっと、えっと、彬」


「うむ。よろしい!」


それからふたりでクスクス笑い合う。


再び幸せな気持ちになったあたしは、カレンダーから目を逸らして、先輩の隣にぴたりと寄り添った。









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