期間限定『ウソ恋ごっこ』
胸がギュッと詰まった。なにも答えられず、あたしは真顔で先輩を見る。


「腹さえ減ってれば普通に食えるぞ、これ」


そんなことを言ってまたパクパクと食べ始めた先輩を見ながら、うれしい気持ちと切ない気持ちが強くぶつかり合って、言いようのない苦しさを感じた。


大切な女。


好きって言えないあたしたちの間では、それがギリギリの言葉。


先輩が精いっぱい気持ちを伝えてくれたことがうれしいけれど、好きって言えないふたりの関係が寂しい。


もどかしい思いと愛しさがどんどん募って、たまらない。


「……あたし、レッスン頑張るね。大切な彼のために」


でもワガママは言えない。


もうすでにあたしの願いは叶えてもらった。その上こんなに優しく大事にしてくれているのに、先輩を困らせたくない。


だからせめて伝えたい。大切な彼が本当は誰を指しているのか、わかってくれるよね?
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