期間限定『ウソ恋ごっこ』
届かなかったお星様
もうさっきからずっと先輩の家の前で、玄関チャイムを鳴らそうか、鳴らすまいか悩んでいる。


人んちの前で、何度も大きなため息をつきながら立ち尽くしている女子高生とか、不審者でしかない。


通りすがりのご近所さんの目が痛かったけれど、どうしても簡単にチャイムを押す気になれなかった。


だってこのドアが開いたら……。


――ガチャッ


いきなり目の前の玄関ドアが勢いよく開いて、驚いたあたしは後ろにのけぞった。


「わっ!」


「あ、美空。もう来てたのか」


ドアを開けたのは、あたしの想い人だ。先輩もビックリした顔であたしを見ている。


「遅いと思って様子を見に来たんだよ」


「お、遅れてごめんね」


「今日は自転車じゃなくて歩いてきたんだろ? じゃあ遅くなっても仕方ない」


「うん」


先輩の言う通り、今日は自転車じゃなくて歩いてきたんだ。


なぜかというと……。


「今日はレッスンの最終日だからな。いつものように俺が家まで送るけど、今日はふたりでゆっくり歩いて帰ろう」


そう。ついにこの日が来てしまった。


レッスン最終日。つまりあたしたちの『恋人ごっこ』終了の日が。
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