期間限定『ウソ恋ごっこ』
「ほら、早く入れよ」
「うん。お邪魔します」
すっかり馴染んだこの家とも、今日でお別れ。
先輩があたしのためにいつも用意してくれるこのスリッパのチェック柄も、明日からは見られなくなるんだ。
「明日はいよいよ折原と料理対決だな。食材、ちゃんと用意してあるか?」
「うん。ぜんぶ用意した」
「学校に持って行くの忘れるなよ? 着いたら調理室の冷蔵庫にちゃんと入れておけ」
「うん」
先輩とウソの恋人ごっこを始めたときから、すでに終わりは見えていたことだし、覚悟はできているつもりだった。
でも先輩と一緒に過ごす時間があまりにも楽しくて、今日という日が来なければいいと何度思ったか知れない。
幸せだったけれど、日々が過ぎていくのが本当に怖かった。
どうか夜が明けないでほしいと願って眠れない夜を過ごし、カーテン越しに朝の光を感じたときの絶望感は、とても言葉で言い表せない。
どうしようもない諦めと、捨てきれない悪あがき。
本当に今日で終わるのかな? 先輩はそれでいいのかな?
『美空はそれでいいの?』
昨日の夜中、寂しさに耐えきれずに真央ちゃんに電話したら、そう聞かれた。
あたしはなにも答えられなくて、ただスマホを握りしめるだけだった。
いいわけないよ。いいわけないけど、これが最初からの約束なんだもの。
「それで、今日はなにを作るの?」
現実から目を逸らしたくて、できるだけいつも通りでいたくて、そんなことを聞いてみた。
「うん。お邪魔します」
すっかり馴染んだこの家とも、今日でお別れ。
先輩があたしのためにいつも用意してくれるこのスリッパのチェック柄も、明日からは見られなくなるんだ。
「明日はいよいよ折原と料理対決だな。食材、ちゃんと用意してあるか?」
「うん。ぜんぶ用意した」
「学校に持って行くの忘れるなよ? 着いたら調理室の冷蔵庫にちゃんと入れておけ」
「うん」
先輩とウソの恋人ごっこを始めたときから、すでに終わりは見えていたことだし、覚悟はできているつもりだった。
でも先輩と一緒に過ごす時間があまりにも楽しくて、今日という日が来なければいいと何度思ったか知れない。
幸せだったけれど、日々が過ぎていくのが本当に怖かった。
どうか夜が明けないでほしいと願って眠れない夜を過ごし、カーテン越しに朝の光を感じたときの絶望感は、とても言葉で言い表せない。
どうしようもない諦めと、捨てきれない悪あがき。
本当に今日で終わるのかな? 先輩はそれでいいのかな?
『美空はそれでいいの?』
昨日の夜中、寂しさに耐えきれずに真央ちゃんに電話したら、そう聞かれた。
あたしはなにも答えられなくて、ただスマホを握りしめるだけだった。
いいわけないよ。いいわけないけど、これが最初からの約束なんだもの。
「それで、今日はなにを作るの?」
現実から目を逸らしたくて、できるだけいつも通りでいたくて、そんなことを聞いてみた。