期間限定『ウソ恋ごっこ』
「上から見ても彬ってイケメンだね」


あたしはそう言って笑った。


なにしろ身長差があるんで、いつもは見上げる状態だからこの角度は新鮮。


「上から彬を見下ろすのは初めてだけど、どこから見てもやっぱりイケメンだ」


「お前、前に俺を見下ろしたことあったろ?」


「え? あったっけ?」


「忘れたのか?」


先輩は寝転がったままピザをひと齧りして、いたずらっ子みたいな顔してニヤリと笑った。


「学園の中庭で、俺がお前の胸にタッチしたとき」


「あ!」


思い出すと同時に、あのときの先輩の手の感触までリアルに思い出して顔が熱くなる。


すっかり動揺しているあたしを見て、先輩はますますニヤニヤした。


「衝撃だったなー。なにしろ生まれて初めて女の胸に触ったし」


「触っ……! あ、あれはただの接触事故でしょ!」


「事故でも触ったのは事実だし。まさかのラッキースケベだったなぁ」


「なに言ってんの!? 彬、なんかキャラ変してない!?」


精いっぱい怖い顔をして見せても、先輩は平気な顔してサラリとかわす。


「俺も一応、男なんでね。あぁ、今でもこの右手にあの柔らかい感触が……」


最後まで言わせず、あたしは持ってたお皿を先輩の顔の上にゴンッと落としてやった。
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