期間限定『ウソ恋ごっこ』
それでも、遠目からでも伊勢谷先輩の姿を確実に見られる時間は貴重だ。


同じように先輩を好きな子たちが固まってると、ノリが合うからテンション上がって楽しいしね。


……ただ、伊勢谷先輩と親友の近藤先輩もその場にいるのが難点だけど。


「毎日よくやるね。いってらっしゃい」


そう言って真央ちゃんがヒラヒラと片手を振った。先輩に興味のない真央ちゃんは、昼食会に一度も付き合ったことはない。


あたしも誘ったことはなかった。だって真央ちゃんが、そういう騒がしいのは嫌いってよく知ってるし。


お互いの趣味や嗜好を尊重する姿勢って、友情を長続きさせるためにもすごく大切よね。


「じゃあ、今日も行ってきまーす」


ランチボックスをバッグの中にしまって、急ぎ足で教室を出て一階へ向かう。


階段を下りる間も、一階の中庭へ通じる廊下を歩く間も、先輩の姿を思うと心はワクワク。足取りも軽い。


一階小ホールの向こう側にある中庭に着いたら、もう大勢の人が集まっていた。


あー、出遅れたか。あんまり後ろの方だとよく見えないんだよなぁ。
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