期間限定『ウソ恋ごっこ』
このまま永遠に家に着かなければいいのに。


たとえ暗闇の世界のループに囚われても、この人と一緒にいられるなら、それでいい。


一緒にいられるだけでいいから。それだけでいいから、どうか神様、お願いだから……。


「着いたぞ。美空の家だ」


頭の芯がクラクラするほど必死に祈ったけれど、願いは聞き届けられなかった。


目の前にあるのはあたしの家。あたしはこれから家の中に入って、いよいよ先輩とはお別れになる。


大声でわめきながら、ここから逃げ出してしまいたかった。


「じゃあな」


あたしを真っ直ぐ見ながら先輩が優しく言った言葉にショックを受けた。


なんであたしの目を見ながらそんなこと言えるの？　あなたは平気なの？


先輩の胸を叩いて責めることができたらどんなに楽だろう。


なんとかしてこの人を繋ぎ留めたいと心の底から思うけれど、それは不可能なんだ。


もうこれが最後だから、なにか言わなきゃって懸命に考えても、正しい言葉がどうしても見つからない。


ふたりで過ごした幸せな時間を、愛しさを、やりきれない悲しみのすべてを、先輩に伝える方法がわからない。
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