期間限定『ウソ恋ごっこ』
「おい、チビ」


買い物に行こうとしたら近藤先輩に呼び止められて、あたしは勢いよく振り向いた。


チビ⁉︎ 佐伯じゃなくてチビって呼んでくれた……!


チビ呼びされてこんなにうれしいのって、生まれて初めて!


胸を弾ませながら先輩を見ると、先輩は黙って腕組みしながら、あたしが持っている生クリームのパックをジッと見ている。


そして、いきなり意味不明な質問をした。


「お前、腕力に自信あるか?」


「……はい?」


腕力? なんでここで腕力?


でも先輩は真面目な顔をしているし、ふざけてるわけでもないようなので、とりあえずこっちも真面目に答えてみた。


「まあ、人並みには」


「よし。じゃあ……振れ」


「はい?」


ますます意味がわかんない展開になってきた。振れ? 振れって……。


「なにをですか?」


「その生クリームのパックだ。手に持ってシャカシャカ振りゃいいんだよ。でも手の温度で温まるとダメだから、できるだけ小さい面積で持つようにして振れよ?」
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