期間限定『ウソ恋ごっこ』
「んもう、司ったら！　冗談ばっかり！」


ひとりの女子生徒が、弾けるような笑い声を上げた。


伊勢谷先輩の左隣という、みんなが憧れるポジションを当然のように陣取っているあの人は、三年生の折原愛美(おりはらまなみ)さんだ。


胸まで伸びた明るいブラウンの髪は、大胆なクルクル縦巻き。


目鼻立ちがハッキリしていて、まつ毛も長くてフサフサしてて、なかなかの美人。


笑顔も態度も見るからに自信に満ちあふれているあの人が、伊勢谷ファン界の頂点に君臨する女帝なんだ。


なにせ折原先輩は、伊勢谷先輩とは赤ちゃんの頃からの幼なじみで、家も隣同士で深い付き合いがある。


そういう特別な関係性や、自分が美人であることを堂々と周りに自慢するような、すごく気の強い人だ。


でもあたしは、あの美人顔はかなりメイクに助けられてると見ているけど。


だいたい、地毛であんなにまつ毛がバサバサなわけないよ。ダチョウじゃあるまいし。


しかも、いつ見ても形状記憶合金みたいにまつ毛がグルンと反り返ってるなんて、どう考えても不自然でしょ。


あれは絶対に手の込んだメイクだと思う。
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