期間限定『ウソ恋ごっこ』
「約束したろ? お前を守るって。だから俺を信じて待ってろ」


その言葉にハッとした。


あの真剣な目だ。昨日の帰り道で、あたしを守ると言ってくれたときの真っ直ぐな目。


あのとき繋いだ手の温もりや、切ない気持ちも同時に思い出して、胸がジーンと熱くなる。


先輩、もう完全にあたしとのことは決着をつけたように見えても、そうじゃなかったんだね。


先輩もあたしのことを忘れようとして、忘れられないでいる。


……うれしいよ。叶わない想いは悲しいけれど、先輩が同じ気持ちでいてくれるだけで、こんなにうれしい。


「じゃあ、俺は行く。後は頼んだぞ!」


そう言うなり先輩は走り出し、調理室から飛び出していく。


その背中に向って真央ちゃんが慌てて「ちょっと!」と叫んだけれど、先輩の足音はどんどん遠ざかって、すぐに聞こえなくなってしまった。


「あーあ、行っちゃったね。美空、どうする?」


「振る」
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