期間限定『ウソ恋ごっこ』
白鳥学園の規則ではメイク禁止のはずだけど、まあ、折原先輩は成績も優秀だし生徒会役員だから、大目に見てもらえてるんだろう。


学生の本分である勉強をちゃんとして、厄介なトラブルさえ起こさなければ、あんまりうるさいことは言わないのが白鳥学園の基本方針だから。


「ねえ、司のお弁当の卵焼き、ひとつちょうだい」


鼻にかかった甘え声で、折原先輩が伊勢谷先輩におねだりした。


伊勢谷先輩が「いいよ。どうぞ」と卵焼きを折原先輩のお弁当箱に入れてあげると、折原先輩は大げさに喜ぶ。


「わーい! あたし、司のお母様が作る卵焼き、昔からだーいすきぃ!」


卵焼きを口に入れてモグモグしながら、目を大げさにパチパチさせて伊勢谷先輩を見上げてる。


瞬きに合わせて長いまつ毛が上下にバッサバッサして、まるで鳥の羽ばたきみたい。


幼なじみって、いいな。先輩の隣で、あんなことができるんだもん。


いや、べつにまつ毛で先輩を扇ぎたいわけじゃなくてね。下の名前で呼んだり、お弁当のオカズを分けてもらったりとかさ。
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