期間限定『ウソ恋ごっこ』
そこら中から黄色い歓声が上がる中、もちろんあたしも張り切って参加を表明！……は、しなかった。というか、できなかった。


周りの異様な盛り上がりを眺めながら、黙って途方に暮れるしかない。


そりゃ、あたしだって先輩にお弁当を作ってあげたい！


たとえ一週間の期間限定でも、そんな新婚夫婦みたいなことができたら最高だもの。


でも、できない。


その夢を叶えるためには、避けては通れない大きな壁が、あたしの前に立ちはだかっているからだ。


その壁の名は『料理』。


そう。実はあたし……ぜんぜん料理ができないの！


まったくの超初心者。というより、まだ初心者のステージにも上がれていない未経験者。


当然、伊勢谷先輩に食べてもらえるようなお弁当なんか作れるわけがない。


ああぁー、残念！　めちゃくちゃ悔しい！


こんなことなら面倒くさがらずに料理の練習しておけばよかった！


いつもお母さんから、『女の子なんだから少しは料理できるようになりなさい。いつか恥をかくわよ？』って忠告されてたんだよね。


そのたびに『女の子だからとか、今どき流行らないから。男女平等！』って耳を貸さなかった、愚かなあたし……。


ガックリ気落ちして周りを見回せば、みんなは自信満々な表情で手を挙げて自己アピールしている。


みんなすごい。それとも料理できないあたしが女子力なさすぎ？


コンプレックスを感じて静かに凹んでいたら、騒動に感化されたのか、近藤先輩のファンまで一緒に騒ぎ始めた。


「あたしは近藤君にお弁当作ってあげたい！」


「あたしも近藤先輩に……きゃ！　ちょっと、押さないで！」
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