期間限定『ウソ恋ごっこ』
「言ってほしかった。俺を信じて、本当のことを言ってほしかった」


「……済まなかった。司」


腹の底から後悔を振り絞るような声で、近藤先輩が謝罪した。


伊勢谷先輩が顔を覆っていた手を離し、ふたりは少しの距離を置いて見つめ合う。


近藤先輩が、まっすぐに親友の目を見て言葉を続けた。


「俺はお前を信じていなかったわけでも、格下に見ていたわけでもない。ただ……」


拳をグッと握りしめ、どうか思いよ伝われとばかりに、声に力を込めて訴える。


「ただ、ただお前の悲しむ顔を見たくなくて、事実を言えなかったんだ。本当にお前を傷つけたくなかっただけなんだよ」


「彬……」


それからふたりは黙り込み、室内はシンと静まり返った。


それぞれ本音を吐き出したせいか、さっきまで切れそうなほど張り詰めていた空気は、今は少しだけ緩んだように感じる。


でも、お互いの距離を測りかねているように見えた。


無理もない。あれだけ大きなトラブルがあった直後なんだし、すぐさま仲直りというわけにもいかないだろう。


あたしも、近藤先輩も、伊勢谷先輩も、それぞれの様子を窺いながら身動きがとれず、息苦しい無言の時間ばかりが流れていく。


どうしよう。せっかく好転しそうな感じなのに、これじゃまた気まずい空気になっちゃう……。
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