期間限定『ウソ恋ごっこ』
とつぜんの出来事に対応しきれなくて、棒立ちしていたあたしと近藤先輩が、やっと折原先輩を止めに入った。


「おい、折原! やめろ!」


「放して近藤君! バカなことをした司には愛のムチが必要なの! 司、あたしの愛で早く目を覚まして!」


なおも平手打ちを続ける折原先輩の腕にすがりつき、あたしは必死に声を上げた。


「愛のムチならとっくに済んでます! さっき近藤先輩が鉄拳くらわしましたから!」


「え? あら、そうなの?」


動きをピタリと止めた折原先輩が、まじまじと伊勢谷先輩を見下ろす。


そして先輩の唇が切れて左頬が腫れているのに気がつくと、「やだ! あたしったら愛の追い打ちかけちゃった!」と目を丸くした。


その慌てた表情とセリフがおかしくて、あたしと近藤先輩が同時に噴き出す。


この緊迫した状況で、このとんでもない行動力が折原先輩らしいよ! 普通、馬乗りになってまで平手打ちする!?


あたしたちが声を上げて笑っているうちに、つられて折原先輩もなんとなく笑い出して、それから伊勢谷先輩まで笑いだして、みんなの笑い声が室内に広がった。


おかげですっかり緊張もほぐれて、気持ちが軽くなったあたしは折原先輩に話しかけた。


「折原先輩、どうしてここに?」


「あなたの親友から連絡がきたのよ」


「え? 真央ちゃんから?」
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