期間限定『ウソ恋ごっこ』
「そうよ。あなたが司に謝罪しに行くけど、無事に済むとも思えないから様子を見に行ったほうがいいだろうって」
意外な話に驚いていると、近藤先輩もここに来た経緯を説明してくれた。
「俺にもあいつから連絡がきたんだ。あいつ、万がいちのことを考えて俺と折原を保険にしたんだな。頭の回るやつだよ」
近藤先輩にも連絡してくれたんだ。あたしひとりが伊勢谷先輩と話し合うより、当事者みんなで膿を出しきった方がいいと考えたんだろう。
本当に真央ちゃんには、参りましたって感じだ。真央ちゃんの思惑通りに近藤先輩はもちろん、折原先輩も最高にいい仕事をしてくれたおかげで、すっかり空気が和んだ。
伊勢谷先輩は余計に殴られてえらい災難だったけど。
「ほら、司。いつまでも床に転がってないで立てよ」
「ああ。……美空ちゃん」
近藤先輩に手を貸してもらって立ち上がった伊勢谷先輩が、いきなり深刻な声を出してその場に土下座した。
「せ、先輩⁉︎」
「申し訳なかった。謝って済むことじゃないけど、どうか謝罪させてほしい」
「頭を上げてください! そんなことしないで!」
「いや、これくらい当然だよ。おわびになんでもするから、なんでも言って」
なんでもって言われても……。
あたしは先輩の後頭部と背中を見下ろし、とまどいながら少しの間考えて、それから同じように土下座した。
「美空ちゃん⁉︎」
「ちょっと佐伯さん! あなたがそんなことしなくていいのよ!?」
先輩たちが慌てている様子を頭上に感じながら、あたしは床にオデコをくっつけたまま話した。
「ごめんなさい。あたし、伊勢谷先輩の彼女にはなれません。『好き』の種類が違うから」
「美空ちゃん……」
「それでも伊勢谷先輩はあたしの、そして学園みんなの憧れです。だから、どうか学園に戻ってきてくれませんか? みんな伊勢谷先輩の帰りを待っています」
意外な話に驚いていると、近藤先輩もここに来た経緯を説明してくれた。
「俺にもあいつから連絡がきたんだ。あいつ、万がいちのことを考えて俺と折原を保険にしたんだな。頭の回るやつだよ」
近藤先輩にも連絡してくれたんだ。あたしひとりが伊勢谷先輩と話し合うより、当事者みんなで膿を出しきった方がいいと考えたんだろう。
本当に真央ちゃんには、参りましたって感じだ。真央ちゃんの思惑通りに近藤先輩はもちろん、折原先輩も最高にいい仕事をしてくれたおかげで、すっかり空気が和んだ。
伊勢谷先輩は余計に殴られてえらい災難だったけど。
「ほら、司。いつまでも床に転がってないで立てよ」
「ああ。……美空ちゃん」
近藤先輩に手を貸してもらって立ち上がった伊勢谷先輩が、いきなり深刻な声を出してその場に土下座した。
「せ、先輩⁉︎」
「申し訳なかった。謝って済むことじゃないけど、どうか謝罪させてほしい」
「頭を上げてください! そんなことしないで!」
「いや、これくらい当然だよ。おわびになんでもするから、なんでも言って」
なんでもって言われても……。
あたしは先輩の後頭部と背中を見下ろし、とまどいながら少しの間考えて、それから同じように土下座した。
「美空ちゃん⁉︎」
「ちょっと佐伯さん! あなたがそんなことしなくていいのよ!?」
先輩たちが慌てている様子を頭上に感じながら、あたしは床にオデコをくっつけたまま話した。
「ごめんなさい。あたし、伊勢谷先輩の彼女にはなれません。『好き』の種類が違うから」
「美空ちゃん……」
「それでも伊勢谷先輩はあたしの、そして学園みんなの憧れです。だから、どうか学園に戻ってきてくれませんか? みんな伊勢谷先輩の帰りを待っています」