期間限定『ウソ恋ごっこ』
そうやって内心ビクビクしているあたしの気も知らず、クラスの女子たちは、突然現れたアイドルに浮かれて大騒ぎ。


しかも悪いことに、そのうちのひとりが「佐伯さん! たしか近藤先輩のファンだったよね!?」とか大声で話しかけてきて、目眩がした。


違うってー! あたしが好きなのは黒い方じゃなくて、白い方!


いや、そんなことより、お願いだから今はあたしをそっとしておいて!


「おい」


頭上から低い声が聞こえてギクリとしたあたしの目に、三年生用の赤いラインが入った大きな内履きが見えた。


「なに隠れてんだよ。出てこい」


……心の底から出たくない。けどバレてしまったらしかたない。


あたしは机の下からモゾモゾと這い出て立ち上がり、その場で上目がちに先輩を見た。
< 46 / 408 >

この作品をシェア

pagetop