期間限定『ウソ恋ごっこ』
先輩は遠慮なんて微塵もない目つきで、あたしをじっと見下ろしている。


せ、先輩の放つオーラに圧倒されて、体が後ろに反り返りそう〜。


「おい、ちょっと来い。お前に用が……」


「この子の名前は、おいじゃありません。佐伯美空です」


近藤先輩の声をさえぎるような真央ちゃんの声が聞こえた。


真央ちゃんはあたしを庇うように、先輩とあたしの間にサッと立ち、ケンカ腰な目つきで先輩を見上げる。


「美空になんの用ですか？」


有名人の先輩相手にもまったく怯まない、堂々とした態度が頼もしい。


あぁ、やっぱり持つべきものはいつも冷静沈着な親友だ！


あたしの感謝の眼差しを受けた真央ちゃんが、『ここは任せて』といった表情でうなずき、近藤先輩にきっぱりと言い放つ。


「どんな用事か知りませんが、まずは、さっき先輩が美空の胸を揉んだことへの謝罪をしてください」


「「揉んでない！」」


あたしと先輩が同時に叫んだ。


クラスのみんなが真央ちゃんの発言にギョッとしている。あたしはみんなに向かって両手をブンブン横に振って必死に否定した。


違う違う、誤解しないで！


こ、これ以上変な噂が広まったりしたら困る。やっぱり自分で直接先輩と話そう！


「先輩。あたしになにか用ですか？」


「俺じゃない。お前に用があるのは司だ」
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