期間限定『ウソ恋ごっこ』
真央ちゃんの表情が険しくなって、切れ長の目が吊り上っている。


真央ちゃんは自分がキツイ言い方をするわりに、同じようなキツイ言い方をする人に反発する傾向があるんだ。


たぶん、磁石の同じ極同士が近づくと反発するのと似た現象だと思う。


「もったいぶらずに教えてくれてもいいでしょ?」


「ここまで伝言しに来た時点で、俺にしてはプレミアムな親切なんだよ。つべこべ言う暇があるならさっさと司に用を聞きに行け」


近藤先輩の声のトーンが1オクターブ下がった。


あ、この人もきっと同じ極に反発するタイプだ。


磁力が強ければ強いほど反発する力が大きいのは、これまでの真央ちゃんとの付き合いでよく知っている。


オロオロするあたしの目の前で、同極同士が睨み合って舌戦を開始した。


「近藤先輩って噂通り冷たい人なんですね」


「俺が冷たかろうが熱かろうが、お前になにか関係あるのか?」


「ありませんよ。初対面の相手に対してこんなに態度がでかい人間なんて、むしろ一切関わり合いたくないです」


「そのセリフ、お前に全力で叩き返す」


真央ちゃんの両目がますます吊り上って、こめかみがピクリと動いた。


これ以上はヤバイと判断したあたしは、ふたりの間に漂う緊迫した空気に急いで割り込んだ。
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