期間限定『ウソ恋ごっこ』
「少なくとも俺はそんなの知らねえよ。それで答えられなくて、あの子が泣いたのか?」


「いいえ。泣いたのはその後よ」


「……これ以上なにしたんだよ」


「あの子のアゴに白ニキビがブツブツできていたから、『ずいぶん汚い顔だけど、そんな不潔なブス子さんが他人の口に入るものを作る気?』って言ったら、急に泣き出したの」


うわぁ、やっぱり折原先輩って強烈。


さっきの人、憧れの伊勢谷先輩の前で、そんな暴言吐かれたんだ。


そりゃ泣きたくもなるよ。


「そんなこと、もうどうでもいいわよ。それよりもねぇ、司」


折原先輩が甘えた声で伊勢谷先輩に訴えた。


「やっぱりお弁当はあたしが作る。それが一番いいと思うの。だって司のことを一番理解してるのはあたしだもの」


「ほかに誰も作れる人がいないようなら、そのときは約束通り愛美にお願いするよ」


「ほんとね? 誰もいなかったら、ほんとにあたしに作らせてくれるのね?」


伊勢谷先輩は穏やかな笑顔でうなずいてみせた。


幸せそうにウットリと微笑み返した折原先輩が、クイッとこっちに顔を向けてあたしを鋭く睨む。


その変わり身の早さと、視線の強烈さに内心ビビりつつ、あたしは状況を理解した。


はあ、そういうことか。


つまり折原先輩は、誰も合格させるつもりはないわけね?


全員を不合格にして、自分が先輩のお弁当を作りたいわけだ。
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