期間限定『ウソ恋ごっこ』
……はい?


思いもよらない質問内容に気が抜けた。だって、今こんなことを聞かれる意図がまったくわからない。


同じことを思ったのか、折原先輩が猛烈な抗議をした。


「ちょっと近藤くん! そんなの料理になんの関係もないじゃないの!」


「料理に一番必要なのは技術じゃないだろ。相手を大切に思う気持ちがなによりも大事なんだ」


そして近藤先輩はあたしを真っ直ぐ見て質問を繰り返す。


「答えろ。お前は、司のどこが好きなんだ?」


近藤先輩を見上げながら、あたしはひたすら困惑した。


得意料理がどうのこうのな話から、なぜこんな真面目な話になってしまったんだ?


つまりあたしはこれから、どれほど伊勢谷先輩を大好きかってことを、演説しなきゃならないわけ? 本人の目の前で?


……新手の嫌がらせだろうか?


でも近藤先輩の目は真剣で、べつにふざけているわけでも、あたしをからかって遊んでいるわけでもなさそうだ。


「そんなの近藤くんの屁理屈よ! やっぱりその子は不合格…!」


「いや、それは俺もぜひ聞きたいね」


折原先輩のキーキー声を伊勢谷先輩が遮った。


「美空ちゃん、教えてよ。俺のどんなところが美空ちゃんをトリコにしちゃったのかな?」


おどけた口調と素敵な微笑みに、胸をドキドキさせながら思った。


もしかしてこれってチャンスなのかな?
< 67 / 408 >

この作品をシェア

pagetop