期間限定『ウソ恋ごっこ』
あたしがどれほど伊勢谷先輩に惹かれているかを伝えるチャンス。


どうせ用が済んでこの教室を出たら、もうあたしと伊勢谷先輩が個人的に会うことも、話すこともないだろう。


だったら、どんなに恥をかいたってかまわないよね? あたしの想いをこの場で、高らかに熱弁してやろう!


覚悟を決めたあたしは胸いっぱいに息を吸い込み、伊勢谷先輩に向かってゆっくりと語り始めた。


「あたしが、伊勢谷先輩に惹かれた理由は……」


「うん、理由は?」


「伊勢谷先輩が、お星様だからです」


生徒会室がシーンと静まり返った。


みんな怪訝な顔をして、あたしのことを見ている。伊勢谷先輩が何度か瞬きをして、それから困ったようにちょっと首を傾げた。


「俺、まだ生きてるんだけど」


「あ、違います。そういう意味のお星様じゃなくて」


あたしは慌てて両手を横にパタパタさせた。


「先輩は選ばれたスターで、逆にあたしは、昆布(こんぶ)やワカメにもなれない存在ってことなんです」


「こ、昆布?」


ますますキョトンとする伊勢谷先輩に、あたしは一生懸命に説明を続けた。


「はい。そもそもあたしは、昔からーー……」



< 68 / 408 >

この作品をシェア

pagetop