期間限定『ウソ恋ごっこ』
クラスで話し合った結果、紙吹雪の担当には、あたしが選ばれてしまった。


『昆布が一本くらいなくても、物語になんの影響もないから』って。


だからあたしは本番中、ずっと体育館ステージの天井裏で息を潜めて、大急ぎで紙吹雪を作ってた。


そして迎えたラストシーンで、あたしが降らせた紙吹雪が舞い散る中、主役の女の子は観客全員の拍手を浴びていた。


スターのようにキラキラ可愛らしく笑う姿を、あたしは暗い天井裏からひとりぼっちで眺めていたの。


お芝居が終わって教室に戻ってから、あたし、担任の先生にみんなの前ですごく褒められたんだ。


『佐伯さんのおかげで、ラストシーンがとても引き立った。とても上手な紙吹雪だった』って。


でもあたしは、先生の褒め言葉を適当に聞き流しながら、お父さんとお母さんはあたしの出番を最後まで待ってたんだろうなあ……って、申し訳なく思ってた。
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