期間限定『ウソ恋ごっこ』
学芸会の片付けがぜんぶ終わって、下校する頃にはもう、すっかり夜で。


ランドセルを背負って歩きながら見上げた空に、星が瞬いていた。


空の色が暗くなるにつれて星はどんどん増えて、輝きはますます強くなる。


まるで暗幕の上に、最高級の金平糖(こんぺいとう)を撒き散らしたみたいに、色鮮やかで優しい光を放ってた。


星って、なんてきれいなんだろう!


感動したあたしは無意識のうちに手を伸ばして、ふと気がついて、黙って両手を下ろした。


あの場所は遠くて遠くて届かない。どんなに触れたいと願ったところで、しょせん一般庶民には叶わない。


ちょっぴり悲しかったけど、けっこう切なかったけど、それでもいいやって納得するしかなかった。


それにあたしの紙吹雪は、あの子をきれいなお星様みたいに輝かせた。


観客たちはいっぱい拍手をしてくれたし、みんなが素敵な笑顔だった。


あの盛大な拍手の1ミリくらいは、あたしの貢献によるものだと思うし、あたしは、みんなの笑顔のお手伝いができたんだ。


それが、生まれつきお星様にも昆布にもなれないあたしにできること。ちっぽけなあたしに与えられた役目なんだろう。


でもそれってさ、きっとそんなに悪いことでもないよね?


一般庶民の負け惜しみかもしれないけどさ……。





……そして、時は流れて今年の春。


白鳥学園の入学式で、あたしはステージでスターのように輝く伊勢谷先輩を見つけた。

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